新しいナノ材料を用いた量子デバイス・機能デバイス開発
Auナノワイヤーを用いた量子ドットデバイス
化学的に作製したAuナノワイヤーは、太さが2nm、長さ数十μm以上の一次元構造を有しており、カーボンナノチューブと同様に低次元デバイスへの応用が期待されます。本研究室では、NIMS森山グループ、東北大学小川グループと共同で、Auナノワイヤーを用いた電子デバイス作製を進めました。その結果、Auナノワイヤーデバイスは、低温で量子ドットとして振る舞うことが明らかとなり、カーボンナノチューブと同様に単一電子トランジスタ特性が発現しました。通常、トランジスタなどのスイッチング素子は、半導体でないと作れませんが、ナノメートルオーダーまで微細化すると、金属であるAuでもトランジスタが作製できることを明らかにしました。さらに、明瞭な離散準位も得られ、単一スピンの取り扱いも可能であることが分かっています。これらを利用した量子ビットの開発も期待されます。論文:
- "Discrete quantum levels and Zeeman splitting in ultra-thin gold-nanowire quantum dots"
S. Moriyama, Y. Morita, M. Yoshihira, H. Kura, T. Ogawa, H. Maki, J. Appl. Phys. 126, 044303 (2019).
- “Single electron transistors with ultra-thin Au nanowires as a single Coulomb island”
M. Yoshihira, S. Moriyama, H. Guerin, Y. Ochi, H. Kura, T. Ogawa, T. Sato, and H. Maki, Appl. Phys. Lett., 102 (2013) 203117.
- “Coulomb blockade phenomenon in ultra-thin gold nanowires”
H. Guerin, M. Yoshihira, H. Kura, T. Ogawa, T. Sato, H. Maki, Journal of Applied Physics, 111, 054304 (2012).
エレクトロクロミック材料を用いた電子ペーパーデバイス
物質・材料研究機構(NIMS)の樋口グループと共同で、電圧を印加することにより色が変化するエレクトロクロミック材料を用いたディスプレイデバイスの開発を行っています。このデバイスは、電圧印加を除去しても色が保持されることから、電力消費が極めて小さな電子ペーパーや表示デバイスへの応用が期待されており、様々な応用を目指して研究を進めています。論文:
- “Electrochemical Switching of Luminescence in a Ru(II)-Based Metallo-Supramolecular Polymer Device”
Y. Muronoi, J. Zhang, M. Higuchi, H. Maki, Chem. Lett., 42 (2013) 761–763.
- “Electrochemically switchable photoluminescence of an anionic dye in a cationic metallo-supramolecular polymer”
Takahiro Suzuki, Takashi Sato, Jian Zhang, Miki Kanao, Masayoshi Higuchi, and Hideyuki Maki, J. Mater. Chem C, 2016, 4, 1594-1598(2016).
強磁性化したPd微粒子による二次元超格子作製と電気的磁性検出
Pdは、フェルミエネルギー付近での状態密度が高く、バルクでは強磁性寸前の常磁性材料ですが、微粒子化することによって強磁性を発現することが知られています。そこで、同学科の佐藤徹哉教授と共同で、Pd微粒子を2次元的に配列した2次元超格子に対して電極を形成することにより、Pd微粒子の強磁性を磁気抵抗により電気的に検出することを試みました。その結果、図に示すように保磁力においてヒステリシスを伴った磁気抵抗の増大が観測され、強磁性の電気的な検出に成功しました。論文:
- “Electrical detection of ferromagnetism in Pd nanoparticles by magnetoresistance measurement”
Takao Okamoto, Hideyuki Maki, Yojiro Oba, Shin Yabuuchi, Tetsuya Sato and Eiji Ohta, J. Appl. Phys. 106 (2009) 023908.
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